イベント「らくがきWORK SHOP」。子供たちと一緒で楽しそうな五味さん ─ 森を守るということについて、どうお考えですか。 ━ 人ってわがままな動物だからさ、バランスのいいわがままになるしかないんだよ。バランスが悪いと積み上がったものがいつか崩れて、また安定したカタチになるじゃん。 　今の学校もそうなんじゃないかな。崩壊って言われているけどさ。オレなんか「今までよく持ったなあ」って。 　毎朝8時半に行って、朝礼して、みんなテストして。スゴイよね、これって。人間のわがままをずっと押さえ付けてきたんだよね。だから今、バランスが崩れて自然に戻ろうとしているだけなんだよ。 　個人の責任に置いては“おもしろいわがまま”は何をしてもイイと思うんだよ。他人に迷惑をかけなきゃね。 　オレがアメリカで会ったヤツなんか、は虫類になりたいって。頭にビョウ埋めたり、手にウロコ付けたり。痛いらしいんだけど（笑）もうすぐトカゲになれるって喜んでるよ。趣味なんだからさ、人にイヤな思いをさせなきゃイイんだと思う。 　森の中にだって不愉快な木はあるでしょ。庭だと好きなモノで作れるけど山なんて勝手に生えてるわけじゃない。 　あと、そこに動物が住んでいてもいいけど、人間を襲ってきたら撃っちゃうでしょ。だから今の人間が望んでいる森って、一方的なわがままで押さえ付けてる“管理された自然”なんだと思うよ。 　例えばアメリカでゲーティッドシティーってのがあるの。門を閉めた街ね。そこをつくったデベロッパーが入居者を募集するんだけど、その時に審査があるの。表向きは経済的な審査だけど実は人種差別をしているわけ。結局、人間が頭で考えてきた民主主義だったけど、この街がすごく受けているってことが今まで積み上げてきたことの結論だよね。 　それに「カラスがダメ、何々ならイイよ」ってのもおかしいと思う。カラスが食べてうまかったりして、経済的価値があったら違ったと思うんだよ。 　でも人間は自分たちの社会を犯されたくないって思うから、排除しようとするんだよ。認めないんだね。 　こんな風にさ「森を守ろう」って言っても、人間は選んでるんだよ。頭で考えるばかりで、本音をかくしてる。 　安全で、好きな、自分たちが欲しいモノのイメージしかない森なんだよ。で、それと違うモノがあったら排除しちゃう。 　緑があふれていて、動物はかもしかまでくらいとかね。でも、かもしかだって本気になればスゴイからね。（笑） 　だから申し訳ないけど、クマ出没とかイノシシが車に追突とかってニュース見ると「クマがんばれー」って思っちゃう。でもオレだって森で会ったら逃げるけどね。（笑） 　本当の森っていうのはイイことばかりじゃなくて、いろんなことが起きるわけじゃない。人間は今、試されているんじゃないかな。これから、どうして行くかってことを。 　森を守るってことは、そうとうな覚悟がいると思うよ。だから、さっきも言ったけど人間はコソコソと生きていくのがイチバン知的なんだよ。 「大人問題」 五味さんのモノの見方に思わずうなってしまうエッセイ ─ コソコソ生きるってどういうことですか。 ━ オレさあ、人間って戦争とかでいなくなっちゃうんじゃなくて、生きる意味が分からなくなって、子供も生まれなくなっていなくなっちゃうんじゃないかと思う。 　例えばさ、獅子座流星群がブームになったじゃない。それをみんなワーッて見るよね。見たことがイイとか悪いとかじゃなくて、人間って感覚の動物だからワーッてのがたくさんあるのは、生きていく快感なんだよ。楽しさなんだよ。 　それって、痛いのも、空腹も、寒いのも、みんな入る。ツライのも、楽しいのも、みんなね。そんなワーッてのがあると、今日もいろいろあったな、明日もいろいろあるかなって。 　それを毎日繰り返してボーッとしているうちに死んじゃうんだと思うの。（笑） 　でも、生きていることに価値とか意味を求めると、何が好きか分からなくなっちゃうのね。この人と暮らしてて価値があるのかとか、子供育てて意味があるのかって。 　そうすると、だんだん生理的に鈍くなっちゃうの。感受性とかも。だから最近で多いのがイイのか悪いかさえ分からないってこと。それが分からないから本音も言えないんだよ。 　こんな風に、いつか人間って種類は終わるんだろうなって。でも、また出てくるんだろうけどね。（笑） 　あと自然ってさ、人間より先に生まれたんだよ。親みたいなもんでさ。気に入らないことがあっても、それを否定しちゃうと自分も否定することになるじゃない。だから“自然は人間が世の中に存在している前提”みたいなモンなんだよ。 　よく「地球に優しく」っても、それは人間の生活環境のことであってオレは汚しきれないと思う。部分的には汚すだろうけど。 　汚しきる前にこっちの方がまいってると思うよ。だって地球はそんなにヤワじゃないから汚れて人間がいなくなっても、ちゃんと宇宙に浮いていると思うモン。（笑） 　そんな中で身を引いてコソコソ生きていくのがオシャレだと思うんだよな。コソコソって言葉があまりにもオシャレじゃないけどね。（笑）でも、簡単なことなのよ。 　「ああ、枯れ葉が落ちてきましたね」って、それを集めて焚き火して「あったかいね」って。ついでにお茶でもコソコソ沸かして飲んで「よかったね」って。 　コソコソって、こんな感じ。（笑） 　写真撮影/寺崎誠三氏 ─ 最後に、アクセスされている皆さんにメッセージをお願いします。 ━ 人間は人間的にしか自然を見れないから、それが弱味だね。だから「木が凛々しく生えている」とか「風雪に耐えて」とか言っちゃうんだよ。でも、木はただ生えてるだけなの。（笑） 　魚とかも「弱肉強食の食物連鎖」とか言うじゃない。けど、そんなんだったら海の中、大騒ぎだよね。（笑） 　だから、人はそういう視点でしか自然を見れないってことに気付けば半分くらい解決するんじゃない？自然派になれるよ。 　あと、オレの本読んで。おもしろいよ！ 五味さんのスパイスがピリリッと効いた楽しいインタビュー、本当にありがとうございました。 ワンダーフォレスト　トップへ