アカシアが咲く地に訪れた時
マロニエのミツをハチが取りにきました
花を追い掛けている時の気持ちはどんな感じですか。
そう言われると別に何も考えていないなあ。(笑)花が咲けば「ハチミツを取らなきゃ!」って本能みたいなモンかな。それで生活しているわけだから、花のあるところにハチを連れて行ってミツを採ってもらう。ただ、それだけのこと。

 ハチも定地養蜂だと、そこの花が終わったら食べ物がなくなるでしょ。我々が運ぶことで新しい食料にありつける。
 お互いに利用しあうんです。まあ、我々が利用している方が大きいけどね。(笑)

 ハチは花が咲いているところに行くと、女王バチが一生懸命に産卵して子供を育てようとします。そうすると働きバチもミツや花粉を活発に集めるから結果的に森の植物の受粉を手伝っているんです。
 自然界でのハチの役割はとても大きい。そして自分たちも数を増やして『分蜂』、つまり巣分かれしていきますよ。移動先の森に住み着いたりするんです。

 また、人間社会でも農薬で受粉をしてくれる虫がいなくなったり、ハウス栽培とか虫のいない環境で野菜や果物が育てられたりしてるでしょ。
 だからハチの巣箱を貸して受粉させる『ポリネーション』も盛んです。果樹園でもハチを放したりするしね。
 人間よりも上手に受粉させるから、大きな実がなるらしいですよ。やはり餅屋は餅屋なんだよね。
こんなに森の奥深いところまで巣箱を置きます
採蜜をしていて気付かれたことはありますか。
自然が減ってきているね。でもそれは、ハチが僕におしえてくれたんだ。
 一番そう感じたのは、ミツが取れなくなったこと。昔と同じように、同じ場所で、同じ期間放しても3分の1くらいしか採れなくなってきてる。
 「おかしいなあ」と思い始めて、まわりをよく見てみると、採蜜する近くの川の水量が減っていることや、森から大木が消えていることが分かりました。

 今では青森と北海道しか行かないけど、昔は大阪にも寄って採蜜したんですよ。でも開発が進んで、ハチを放せなくなってしまった。
 ミツを取るということは、当り前だけどそこに森や花畑がないといけないでしょ。30年程この仕事をしているけど、大阪のようにどんどんそういう場所がなくなってきています。

 だから、これからは自然を守っていかなければならない、と思うんです。
釣り好きの花田さんのお気に入りスポット
日本では北海道だけに生息するオショロコマも釣れる
どのようなかたちで自然を保護していこうとお考えですか。
まず僕個人としては『自然塾』を北海道に開校したいと思っています。それも子供だけでなく、大人も一緒に自然に触れることができるようにね。

 友だちがたくさんいるから、みんなで少しずつ持ち寄って、自然の中で泊れる場所を作ろう、って話しています。
 建築のプロじゃない、素人が作るから格好は悪いかもしれないけど、でも僕なら自然のことをおしえてあげられる。自然の中での生き方や知恵、そして仕組みなんかをね。

 あと、自然を知りたいのなら、机の上で考えていてもダメ。その場所に行って、自分の目で見て、感じて、確かめないと。

 例えば、自然の中で魚釣りをして楽しかったとするでしょ。最初は釣りをすることで、魚を可哀想と思うかもしれない。でも、釣れれば楽しいし、食べれば美味しいでしょ。
 そうすると「魚は人に食べられる生き物なんだ」とか学べるし「また釣りに来たいから、この川や自然を守らなくっちゃ」って気持ちが当り前に湧いてくる。心に植え付く。
 「その場所に行かなくっちゃ」ってこういうことなんです。

 あとは、もう木を切らないことですね。行政も、民間も木を切らないでほしい。特に『大木』を。

 大きな木は保水力があるんです。森がある、って見てみても今は細い木ばかりでしょ。植林のためや、じゃまにされたりして大きな木がどんどん伐採されています。

 そうすると森はその面積のままで存在しても、全体の保水力が落ちてしまう。保水力が落ちると、森から川へ流れる水量が少なくなり、さらに海へ注ぐ水も減るんです。海のプランクトンは森から流れる栄養豊かな水が必要だからプランクトンも減ってしまう。さらに今度は、それを食べる魚にも影響が出る。
 実は自然は、みんなつながっているんだよね。
最後に、アクセスされている皆さんにメッセージをお願いします。
僕が考えるような『自然塾』が全国の過疎地なんかで、たくさんできればいいですね。そして、子供たちに自然の役割や大切さをおしえてあげることが僕たち大人の仕事なんじゃないかな。

 だって昔のように自然が回復するのは、もう僕らの世代じゃないのですから。
次代に夢を託されている花田さん。自然塾の早期実現に期待しております。
●今回の取材時にハチミツの製造課程を見せていただきました
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