三本足杉と周囲の森
三本足杉
ヤクザルのファミリー
他にエピソードや、感動されたことはありますか。
そうですね、屋久島では食べてばっかりいました(笑)。泊まりがけの撮影だったし、ポーターさんにお願いして食料を運んでもらって。体力勝負ですしね。

 一番感動したのは川が増水した時。自然がとっても大きく見えました。写真には撮らなかったのですが望遠レンズでのぞいて、そのスケールに驚きました。何だか自分が小さく思えましたよ。
 他にも「樹齢数十年くらいかな?」って思った木が、実はその大きさになるまで200年以上かかっていたり、ファインダー越しに隅々まで見ていたはずなのに、できあがった写真に「こんなところにシダがある!」って発見したり。
 そんなことがおもしろさや喜びにつながっていきました。あと、樹齢数千年の木も小さな苔も、フィルムに収まっちゃえば同じサイズになるでしょ。それもおもしろかったですね。

 僕は、屋久島を撮り始めてから、どんどん日本の文化、森の文化に興味を持つようになり、またその奥深さに気が付きました。ちょうど日本の世界遺産を撮影している時期とも重なっていましたしね。
その『日本の世界遺産展』が世界各地で開催されていますが、どのような反響がありましたか。
ヨーロッパの人から見ると「日本は神秘的な国」のようです。日本では「森には神様が住んでいる」という考え方でしょ。でもヨーロッパだと森に住んでいるのは「魔物」なんです。それで「木は切ってしまえ」って、森や自然を征服してきた歴史がある。ですから、それを敬い、守ってきた日本は不思議なのでしょうね。

 あと、おかしかったのがマレーシアの学生からの手紙。写真展の感想を送ってくれたのですが、その一文に「自然やお寺が世界遺産なのはわかるけど、何で白川郷のように人が住んでいる“家”がなっちゃうの?」って(笑)。確かにそうですね。

 僕自身、世界遺産というのは切り口であって、いかに自然と人間が共生してきたか、周囲にどれくらい豊かな自然が残っているかが大切だと思っています。また、世界遺産になるには財産を所有する国がユネスコに登録を申請しなければいけませんし。彼らから見ればそういうことに価値観を持つ日本は不思議の国なんですね。
母子杉近辺
縄文杉
現在は、どのようなご活動をされていますか。またマイブームをおしえてください。
今は、四国八十八ケ所巡りと、沖縄の写真集を作っています。四国の方は、密教でいわれる宇宙の真理は楽園に近いのでは、と考えて。空海が考える楽園を撮ってみたい。かなり哲学的な写真集になりそうですね(笑)。最近、僕の中で楽園の定義がどんどん広く、深くなっているんです。

 沖縄の方は「ニライカナイ」がテーマ。「向こうの国には楽園がある」という考え方ですね。今までのように青い海、白い砂浜はもちろん、台風の荒れた海にも挑んでみました。また、沖縄にはマングローブの林がありますが、それにも興味を持っています。
 水辺の植物は、生命が海から陸に上がってきた「命がたどってきた道」の中間にあるでしょう。ここから自然の意味、意義を考えていきたいですね。潮が引いた時にジッと30分くらい待ってみると、鳥やカニなどの生き物がたくさんあらわれます。観察しているとおもしろいですよ。
 そんなことから、マイブームは沖縄料理。ゴーヤ−チャンプルーや豚肉料理のラフテーなんかを作っています。器も好きだから、焼物や再生ガラスで作ったコップを集めたり、また、もともとお茶が趣味でふだんは中国茶を飲んでいますが、サンピン茶にもはまってますね。
─ 最後に、アクセスされている皆さんにメッセージをお願いします。
自分が育ったところはきれいだったな、って思えることが気持ちの余裕になったり、癒されることにつながります。
 僕たちの身近な所にも自然はたくさんあります。ふだんは立ってものを見ているけど、ゴロンと寝そべってみてください。視点を変えて自然を見るといいですよ。いろんな発見がありますから。その時カメラを持っていれば、なおいいですね(笑) 。

50ケ国以上で撮影され、それでもまだ「世界は広い」と言われる三好さん。これからも私たちの知らない「楽園」を見せてくれることでしょう。
※このページの写真はすべて三好和義氏の撮影によるのもです。
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