木の楽器 コカリナ
今から6年程前、お友だちからのプレゼントがコカリナとの出会いだったそうですが。
ええ、私は元々フルートを吹いていて『笛』というものに、とても興味を持っていたのです。それで友人が、ハンガリーのお土産に「こんな笛見つけたのよ」ってコカリナをくださったのですが、見ての通り小さくてオモチャみたいでしょ。(笑)
でも、吹いてみたら「何だ、これは!」って。今までに聞いたことがない音が出たのです。それで毎日々々吹いて、いただいた1本を吹きつぶしてしまったのですね。

 それでまたハンガリーに注文したのですが、良いものはいいけど半分は不良品が届いて。だって、穴の位置がおかしいんですよ!(笑)「これじゃあ、吹けない」って何度かお手紙も出したのですが変わらなくて。しまいには「じゃあ、日本で作ってしまおう!」と製作も始めちゃったんです。(笑)

 日本の木の音を聞いてみたいという気持ちと、世界一と言われる国内の木工職人に頼んでみたかったこともありました。
 最初は簡単に作れると思っていたのです。でも、全国の職人さんにお願いしたのですが「できたよ」って、いつまでも返事が来ない。形になっても、音が出なかったのです。

 コカリナの命は、一番高い音まできれいに出てくること。でも、肝心のそれが出ない。どうやっても分からない。それでとうとうコカリナ職人さんに会いに、ハンガリーまで行ってしまいました。

 ビックリしていましたよ。「何でわざわざ日本からコカリナなんか」って。ハンガリーではそんなにメジャーな楽器じゃないのですね。それで「もっといろいろ素晴らしい笛があるよ」って逆に言われちゃいました。(笑) 確かにおもしろいものはあったけど、何だかコカリナ以外に魅力を感じなかったのですね。

 試行錯誤の結果、今では国内でも素晴らしいコカリナを製作できるようになりました。職人さんも40人以上いらっしゃいますよ。愛好者のサークルも全国で100を超えました。
 1本から始まったコカリナの輪がこんなに広がって、とても嬉しいですね。
北海道函館市での野外公演
 
黒坂さんをそれほどまでにとりこにした、コカリナの魅力は何でしょう。
魅力は言い尽くせないですね。とにかく吹いていて楽しい。コカリナの音色は木の中を風が通り抜ける音でしょ。木の良さというか…『木の音』というものがこんなに出る楽器はないんじゃないかな。
 それと肌ざわりがいいのね。フルートは金属でしょ、比べてみるとコカリナは、触れていてとても気持ちがいい。
 例えば、金属の箸で食事するより、木の箸で食べた方が気持ちいいでしょう。そんな感じですね。
 他にも、薬指と小指を使わなくていいから、子供やお年寄りも簡単に楽しめます。意外と薬指は動かしにくいんですよ。その点コカリナは機能的に音が出せるから、指の動かし方も楽しいですし。それに、小さいから携帯に便利で、ポケットに入れてどこでも持っていって吹くことができますしね。
外で吹いていると鳥が集まるというお話を聞いたのですが。
本当ですよ。私は野外コンサートもしますが、いろんな鳥が集まって来ます。おかしかったのは日比谷野音でコンサートをした時。「さすがに都会だから鳥は来ないだろうな」って思っていたらカラスがたくさん集まってきちゃったんです。(笑)

 これは私が勝手に思っていることなんですが「鳥のさえずりは木の音を真似たんじゃないかな」って。だって木の方が先に地上にあったでしょう。鳥は木の音を聞いて、自分たちの声にしていったんじゃないかな、なんてね。
 やはり知人が野外でコカリナを吹いていたらショウビタキという、ふだんは人に近付かない鳥まで来たそうです。そして、知人がその鳴き声に真似て吹いてみたら、ちゃんと答えて鳴いてくれたそうです。

 コカリナは人間と自然の真ん中にあって、お互いを通訳しているのかも。だから鳥とも会話ができる楽器なのでしょうね。
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